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2024年05月31日

業務改善の進め方(3)データ分析の重要性と方法

業務改善に欠かせないデータ分析の重要性と方法

業務改善において欠かせないのは、課題の把握と改善前後の効果検証です。そのためには、データ分析が重要な役割を果たします。しかし、小規模な企業では、日常業務に追われてデータベース自体がなかったり、データ分析にまで手が回っていないことが多いです。そこで、今回はデータ分析の方法について解説します。

データ分析の重要性と初めのステップ

会社を経営する上で、売上や経費の記帳は必須です。しかし、決算の時だけ行う会社も少なくありません。これでは、タイムリーなデータ分析ができません。まずは、毎月の財務データ入力を習慣化することが重要です。これらは会計事務所に依頼しても構いませんが、小規模な企業では自分で入力した方が経費の無駄や資金繰りを把握しやすいです。

データベースの作成とデータの蓄積

次に、売上や原価などの財務データと、それ以外のデータを蓄積してデータベースを構築します。Excelなどの表計算ソフトを使用すれば十分であり、特別なソフトを導入する必要はありません。財務データ以外には、来客数や販売個数、利用時間、電気やガスの使用量などが含まれます。現時点でデータ分析に必要がないと思われるデータでも、後から役に立つことがあるので、可能な限りすべてのデータをデータベースに入力することをお勧めします。これらのデータを一元管理することで、分析が容易になります。

データ分析方法

次に、データ分析の方法について説明します。まずは月ごとの推移を見ていきます。売上や原価などのデータは会計ソフトでグラフ化できますが、会計ソフトに入力しないデータと財務データの関係はExcelで作成したデータベースで分析する必要があります。

例えば、電力使用量について考えてみましょう。冷暖房の使用頻度が上がると、電力使用量も増えて電気代が上がります。しかし、電力単価も変動するため、金額だけを見ても電気代の増減理由は分かりません。そこで、電力使用量を前月や前年同期と比較したり、販売数量や稼働日数と電力使用量の関係をグラフ化することで、より詳細なデータ分析が可能になります。

このように分析することで、例えばエアコンや冷蔵庫の故障による電力使用量の増加など、真の原因を特定できる場合があります。

【事例】OBCでのデータベース作成と分析

次に私が行ったデータ分析の事例を紹介します。

まず、2022年2月にOBCを事業譲受した際、データベースは引き継ぎませんでした(もともとなかったのかもしれません)。そこで、最初に貸し会議室のデータベースを作成しました。データベースには、利用者名、施設、利用日時、売上、特記事項などを記録しています。これにより、会議室の稼働率や会員と一般のお客様の利用頻度などが容易に把握できるようになりました。

次に、数か月データを蓄積して売上の傾向が掴めるようになった段階で、会議室料金体系の変更しました。事業譲受の時点でOBCの貸し会議室の料金は6つの体系に分かれておりましたが、データ分析の結果に基づき、安い方に合わせて4つの体系に統合しました。その結果、値下げしたにも関わらず、売上はほとんど減少しませんでした(本当は増えて欲しかったですが…)。この理由としては、値下げにより利用時間が増えたことや、元々、利用されていなかったということが考えられます。これらもデータベースから会議室の稼働率を調べることで原因を追究し、例えば、プロジェクターなどの備品の無料化や内装の変更などでサービスの向上を図りました。

また、料金体系がわかりやすくなることで、運営管理が容易になった上にお客様も料金体系を理解しやすくなりました。これにより、双方にとってメリットが生じました。

まとめ

データ分析の重要性は、企業の経営判断や業務改善において欠かせない要素です。日々のデータを蓄積し、定期的に分析することで、売上や経費の動向を把握し、効率的な経営が可能となります。OBCの事例では、データベースの構築と分析により、料金体系の見直しやサービス向上を実現し、売上を維持しつつ顧客満足度を向上させました。このように、地道なデータ蓄積と継続的な分析が、経営の質を高める鍵となります。日常業務に追われがちな中小企業でも、表計算ソフトを活用することで、データの一元管理と有効活用が可能です。データ分析を積極的に取り入れ、経営判断の精度を高めましょう。

2024年05月04日

地方企業の東京進出支援します。

 東京都大田区には羽田空港があり、蒲田駅から品川駅まで行くと新幹線に乗ることができ、交通の便がとても良いです。OBC 大田ビジネスコミュニティーセンターには、九州の企業が東京の営業拠点としてご利用されていますが、この度、北海道の企業が営業拠点としてレンタルオフィス会員として入会されました。

 入会審査の時にお話を伺ったところ、新製品を販売しているが、地元では保守的で無料の試供品を提供しても試してくれない。また、これから海外への販売も考えているが、地元には相談や支援をしてくれる団体や機関がなく、どうすれば良いか困っていた、ということでした。そこで、OBCの概要や支援内容についてご説明したところ早速ご入会して頂きました。

 大田区は中小企業向けの支援制度が充実しており、商工会議所や大田区産業振興協会による無料相談が受けられます。また一定の要件を満たすと融資を受ける際に利子補給の制度もあります。

 ですが、公的機関の支援制度だけは満足の行く解決策を見出すことができないと思います。特に無料相談は私も試しに利用しましたが、その場限りの相談で終わってしまったり、専門家派遣制度を利用して営業・販売が得意な中小企業診断士に貸し会議室の営業戦略について相談しましたが、「DM送りましょう・テレアポしましょう」程度のアドバイスしか受けられませんでした。結局、相手のビジネスや内容を理解するまでには時間が掛かりますし、ちょっと打合せしただけで思い付いたアドバイスはほとんど役に立ちませんでした。実際、私自身が単発のコンサルティングを受けないのもそのような理由からですが、他の専門家と呼ばれる方にも過度な期待をしない方が賢明です。

 OBCでは、有人対応の強みを活かし、会員様への相談・支援も行っております。レンタルオフィス会員として入会されると、何度でも無料で経営相談を受けられます。単発のコンサルティングではないので、試行錯誤を繰り返しながらビジネスを発展させていくことができます。また、私自身が起業直後から海外との取引を行っており、契約書の作成から見積、請求、代金回収まで経験しているので海外案件のご相談もお受けできます。更に、提携している士業や専門家の方も多いので、私が対応できない案件でもご紹介することで課題解決に寄与できます。

 実際の事例としては、開業のため格安でホームページを作成できる会員様を他の会員様に紹介したり、公的職業訓練の運営の際に必要なキャリアコンサルタントを会員様に紹介したことがあります。事前に充分にヒアリングした上で、双方メリットがあると判断した場合のみご紹介しますので、スムーズにいくことがほとんどです。

 このようなOBCのサービスを利用して起業や地方企業の東京進出を目指してはいかがでしょうか。いずれは海外進出も視野にビジネスを共に発展させていきましょう!

 

2024年04月24日

人件費はコストではなく付加価値である。

  
人件費とは、企業が従業員に支払う給与や社会保険料などを含む会計上の費用を指します。しかし、これを単なる「コスト」として捉えてしまうと、経営者は自然と人件費削減を目指すようになり、結果として社員のモチベーション低下や企業の長期的な成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

売上高営業利益率(ROS)と人件費削減の関係

この問題の背景には、企業の業績評価指標である**売上高営業利益率(ROS)**の存在があります。一般的に、ROSが高い企業は収益性が高いとされ、株主にとって魅力的な企業と見なされます。しかし、営業利益は人件費の調整で容易に変動するため、人件費削減によってROSを引き上げようとする傾向があります。

事例比較:A社とB社

例えば、売上が同じA社とB社を比較した場合、A社は低賃金でROSが高く、B社は高賃金でROSが低いとします。株主目線ではA社が良い企業に見えますが、社員の立場からすればB社の方が満足度が高い可能性があります。では、社員のモチベーションが低いA社は、将来的に持続的成長ができるのでしょうか?

付加価値額と労働生産性という別の指標

ここで注目すべきなのが、付加価値額という別の経営指標です。これは、

付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費(+租税公課や賃借料など)

で算出され、企業がどれだけ価値を生み出しているかを測る上で、より本質的な指標とされています。さらに、これを従業員数で割ることで求められる労働生産性も重要な視点です。

中小企業にこそ重要な視点

大企業や上場企業は株主向けの報告が求められるため、どうしてもROS重視の傾向があります。しかし、中小企業や家族経営の企業では、付加価値額や労働生産性を重視した方が健全な経営が可能です。人件費・利益・設備投資のバランスをとりつつ、社員の満足度やエンゲージメントを高めることが、最終的に業績向上にもつながります

人件費は「広告宣伝費」としても機能する

実は、人件費は広告宣伝費としての役割も果たすと考えることができます。社員の待遇が悪い企業は、口コミやSNSなどでネガティブな評判が広まり、採用難やブランドイメージの低下に繋がることがあります。一方、待遇の良い企業は社員のやる気が高く、離職率も低く、企業全体のパフォーマンスが向上します。

虚偽の労働条件が招く問題

近年では、労働条件に虚偽を提示する企業も存在し、そうした企業では社員のモチベーション低下や品質管理トラブルが頻発しています(例:某ペットフード会社など)。これは、人件費をコストとしか見ていない経営の弊害といえるでしょう。


経営者が持つべき視点:人件費は投資であり付加価値

結論として、私は自身の経営経験やコンサルティングを通じて、人件費をコストではなく「付加価値」や「将来への投資」として捉えることの重要性を強く感じています。給料を上げることは、短期的には利益を圧迫するかもしれませんが、中長期的には社員満足度の向上と企業の持続的成長に大きく寄与します。

人件費は削減すべきコストではなく、成長を生み出す源泉です。その視点を持つことが、これからの時代の経営において不可欠だと考えます。

OBC 大田ビジネスコミュニティーセンターではレンタルオフィスの会員だけでなく、非会員の方にもコンサルティングを行っています。蒲田近郊で対面でのコンサルティングをご希望の方はお問い合わせフォームからお申し込みください。

2024年04月17日

小さな会社の社長の “しない” 営業戦略

 OBCのレンタルオフィス会員様は他からの移転で入会されることもありますが、やはりサラリーマンを辞めて、独立・起業される方が多いです。その中で、開業当初にお客様を確保することができず、軌道に乗るまで苦労される会員様が多いのが実態です。そして、一部の会員様は自分ではどうにもできなくなって、私に相談・助言を求められることがあります。私がアドバイスした事例を紹介しながら、営業戦略の参考になれば幸いです。なお、これは業種や置かれた状況により、全ての会社に当てはまる訳ではないですし、場合によっては全く逆のアドバイスをする可能性もありますのでご承知おきください。

1.安売りするな

 私も最初はそうでしたが、開業直後は仕事がないので、どうしても値段を安く設定し”薄利多売”で仕事を取ろうします。しかし、安く受注したところで、それが継続・安定して受注につながるとは限りませんし、多くの場合、“薄利少売”になってしまっているようです(単発で終わることが多い)。この方法では事業継続が困難になりますので、絶対におすすめしません(安くしたい気持ちは十分わかりますが…)。そこで、まずはお客様と商談の段階まで持っていき、「いくらならご発注頂けますか?」とか、「ご予算はどれくらいでしょうか?」と聞いています。そこで、「まずはそちらから最初に料金を開示して欲しい」と言われたら、ちょっと高めの見積を出します。その時に、「予算が合わなければご相談ください。」と付け加えることも忘れないでください。そこからが勝負で、値引き要請があれば、「いくら値引きすればご発注頂けますか?」と聞いてみます。そして、双方予算が合えば「今回だけのお試し・限定価格です」と言って受注すればよいのです。
 薄利多売は大手企業の戦略で開業当初の1人会社が取るべき戦略でないです。どうしても薄利多売をする必要があるなら、顧問契約やサブスクのような定期的に収益が上がるビジネスモデルに転換しないと早晩行き詰ります。

 なお、これには例外があります。特に海外の顧客で、いくら安い値段で出しても、必ず高いと言ってくる人がいます。それは値引き要請ではなく、相手にこちらの要求を飲ませたという優越感に浸りたい性格の人がいます。特に隣国の方で、このようなビジネススタイルの方が多いので要注意です。その場合は、単純にお断りすれば良いのです。相手が本当に欲しいなら、いったん断っても交渉は再開されますのでご安心ください。

2.なんでもするな

 これも1番目のアドバイス関連しますが、とにかく最初は売れないので、なんでもやります!と言ってしまう人が多いです。ですが、発注側の気持ちを考えてみてください。独立直後で実績もない会社に何かを発注するということは、それだけでリスクがあるのです。品質やサービスレベルが不明であり、納期通りに対応してもらえる保証が何もありません。

 過去に、私が超大手企業と取引したときは契約段階で3年分の決算書を出すように言われたことがあります。その時は先方から取引したいとのことだったので、1期目でまだ決算書もないと伝えたところ、決算書の提出なしでも取引できました。 逆に考えると、その会社は実績のない会社とは取引しないという方針だったようですが、私はある分野で専門性に特化していたので契約に至りました。
 やはり自分の得意分野・専門領域で差別化して営業していかないと受注は到底難しいです。まずは自分が得意分野で経験と実績を積み上げるまで、なんでもやってはいけないのです。例えて言うなら、1人会社の社長はスーパーマーケットやコンビニではなく、専門店を目指す必要があるのです。

3.売るな

 これはちょっと驚かれるかもしれませんが、開業してからすぐに消費やサービスを売っては行けないのです。よく、「〇〇の資格を取って独立したので、仕事ください!」という方がいますが、これは最もダメな営業行為です。仕事に飢えている経営者に仕事は回ってきません(異性に飢えている人が恋人ができないのと同じですね)。受注したい気持ちが先走って安値で受注してしまい利益が出ないどころか赤字になってしまったり、手に負えない仕事を受注してしまって、顧客を満足させることができず信頼を失うことすらあります。
 まずは、自分の商品やサービスを売るのではなく、相手を豊かにすることを考えて欲しいのです。Give and Takeや費用対効果という言葉も先に出費し、後から回収するのです。逆ではありません。具体的な営業方法として、まず見込み客を見つけたら、自分の仕事は後から貰えると信じて、相手の利益になることを真剣に考え、提案するのです。例えば、相手の話を聞いて、そのニーズに応じてお客様や専門家を紹介するとか、困っていることを解決してあげるなどです。その人から仕事を貰えるとは限りませんが、回りまわっていつか仕事がやって来ます。

4.焦るな

 営業は魚釣りをやっている感覚に似ています。まずは道具を準備し、適切なタイミングで、針にエサをつけて海の中に入れたら、後は辛抱強く待つ必要があります(ただ、待ち過ぎてもエサだけなくなっていたということもありますので、どこかで確認するのも大事です)。例えば、見積を出しても連絡がない場合は、こちらから電話してみるのが良いです(メールではなく、敢えて電話してください)。担当者から今どういう状況か、もう他に発注されてしまったのか、なぜ受注できなかったのかなどを聞くには電話の方が良いのです。そうして次回の営業活動にフィードバックしていくことで受注確度を高められます。

 また、案件が進まないときは戦略的に敢えて断ることも有効です。例えば、「見積有効期限が過ぎています」とか「他の案件を受注したので忙しい」などと言って一旦断ると、顧客が本当に発注する気があるなら「再度見積を出して欲しい」とか「〇〇までに発注する」などと言ってきます。逆に何もなければ、これ以上その案件を追う必要がなくなりますので気持ちを切り替えることができます。

 これも私の体験談ですが、5年前にドバイの展示会でたまたま知り合ったイタリア人社長から、日本に現地法人があるから帰国したら遊びに来いと言われたことがあります。帰国後すぐにアポを取って営業プレゼンに行きました。その時は特に仕事の発注もなく、コロナ禍中にそのイタリア人社長も帰国し、日本人の社長に代替わりしていました。ただ、そこの社員が私のことを覚えていてくれたようで、今年になって、新しい日本人社長と面談し、結果的には高額なコンサル案件を受注できました。その間特に営業活動はしていなかったのですが、5年間釣竿を海に入れていた状態だったのかもしれません。

 その他にもまだまだ営業戦略(というより手法とか戦術でしたね。)はあります。このようなコンサルティング業務はまず相談者様からのお話をよく聞いて、何が最適なアドバイスを考え、時間を掛けて議論しながらそのアドバイスをブラッシュアップしていきます。ですので、無償で行うことはできませんが、ご満足される相談者様がほとんどです。

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