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2024年08月21日

業務改善の進め方(5) 社員からの改善提案は不要

以前、ある製造業の社長様から、事務や現場で働く社員からの改善提案が出ないという悩みを聞きました。その会社では過去に改善提案に対して報酬を出していましたが、それでも提案が増えなかったそうです。

このような状況に対して、「改善提案とは、実は非常にレベルの高い要求です。社員にそれを求めるのは得策ではありません。」と助言しました。今回は、社員に改善提案を求めずに改善をする方法について述べていきます。

1.改善提案の難しさ

改善提案とは、社員が自発的に業務上の問題を把握し、対策を考え、効果を試算し、書面にまとめて提案するという非常に高度なプロセスです。これは、病気の患者が自分で診断を行い、検査や治療法を医師に指定するようなものです。患者が医師に治療を委ねるのと同じく、改善提案から実行までは専門家に任せた方がより効果的なのです。

2. 社員が改善提案を出さない理由

社員が改善提案を出さないのには、下記の理由が考えられます。

  • 改善方法が不明: 問題を把握していても、どう改善して良いか分からない。
  • 自己能力不足の懸念: 複数の社員が同じ業務をしている場合、問題提起が自分の能力不足と思われるリスクがある。
  • 人間関係のリスク: 目立った行動が、同僚との人間関係を悪化させるリスク。
  • 改善失敗のリスク: 改善が失敗した場合、その責任を負うリスク。
  • 報酬の不確実性: 改善が成功しても、報酬が少ない、または確約されていないことがある。

さらに、職場からの改善提案は全体を俯瞰できていないポジションの社員が発案しますので、部分最適になりがちです。せっかく社員が頑張って改善提案を出しても、一度却下されてしまうと萎縮してしまい、次の提案が出にくくなります。

3. 専門家による問題解決の重要性

そこで、私が行う現場改善コンサルティングでは、社員から改善提案を求めるのではなく、職場の問題を抽出することに重点を置いています。職場が抱える問題点や困っていることを徹底的にヒアリングし、対策は私が考えます。ただし、改善策が押し付けにならないように、途中で職場の意見を聞きながら、経営層を含む関係者と事前にすり合わせを行います。また、本格実施前には必ずテスト運用を行い、慎重に改善活動を進めます。この手法は時間がかかりますが、失敗のリスクを最小限に抑えられます。

4. 社員モチベーションの向上

通常、コンサルタントには人事権がありませんので、社員との人間関係がうまく構築できると、気軽に相談して貰えるようになります。さらに、コンサルタントという調整役が入ることで、改善活動による社員間の軋轢を生むことがなく円滑に進められます。

また、私の場合は、改善により得られた便益を金額で評価し、その一部をボーナスとして社員に還元することを事前に社長に約束してもらいます(通常便益の1/3を賞与原資としてもらいます。)。これにより社員のモチベーションが向上するのと、コンサルタントへの協力も得られやすくなります。

また、ある程度改善活動が軌道に乗ってくると、徐々に社員たちが自ら考えて行動できるようになってきますので、コンサルティングは後方支援がメインとなっていきます。

5. 会社側にとってのメリット

会社側には一時的にはコンサルティング費用が発生しますが、その費用以上の効果を期待できます。更に社員が改善すると自分たちの収入が増えると実感できますので、より意欲的に働いてくれるようになります。

まとめ

改善提案は社員に求めるのではなく、問題提起にとどめた方が改善活動を進めやすいです。問題解決をプロに任せ、社員に手本を見せることが、より効果的な改善につながります。有能なコンサルタントに依頼することも経営者の仕事であるといえます。

2024年05月17日

業務改善の進め方(2)EXCELを活用した定例事務作業の効率化

前回に続き、多くの企業で周期的に発生する事務作業、例えば請求書の発行や取引先へのメール連絡の改善について考えます。

まず前提として、定例作業はEXCELで対応できることが多いため、次の方針で改善を行います。

  • 新たな有料システム導入はしない
  • 修正できる人が限られるためマクロは使わない
  • なるべく簡単な操作性を追求する

1.請求書発行業務の効率化

取引先の少ない企業やレンタルオフィスに入会されているスタートアップ企業では、特別な請求書発行システムを導入せず、メールまたは郵送で請求書を発行していることが多いと思います。ここでは、請求書をメール添付で送信する作業を効率化した事例を紹介します。

メール送信の基本的な手順は次の通りです。

  1. 宛先・件名・本文を入力
  2. 添付ファイルを添付
  3. 送信

日付や宛先を除き、毎月同じ内容となることが多いので、これらをEXCELで自動化します。以下はメールの参考例です。


【宛先】:AAA@****
【CC】:BBB@****
【件名】:X月分の請求書を送付します。

【本文】
AAA様
いつもお世話になっております。
X月分の請求書を送付致します。
以上、取り急ぎご連絡まで

【メーラー側で設定する署名】

【添付ファイル】

この例では、AAA様、BBB様、X月と添付ファイル以外は全く同じ内容になります。これをEXCELのHyperlink関数を使って自動化します。

例えば、セルA1にメールアドレスが入力されている場合、=HYPERLINK("mailto"&A1)と入力すると、A1のメールアドレスがメーラーの送信先に自動で追加されます。そのほかの入力についてはご自身でお調べ下さい。

2.ファイル名変更の効率化

請求書作成をEXCELで行っている場合、この作業も効率化できます。弊社では次の流れで請求書を作成・発行しています。

  1. 請求書に金額・日付等を入力
  2. 請求書を印刷し、押印 or 電子印鑑を利用
  3. 請求書の内容を紙でチェック
  4. 請求書をまとめてスキャンしPDF化(1つのファイルとして生成)
  5. ファイルをページごとに分割(フリーソフト利用)
  6. ファイル名を一括で変換
  7. メールに添付し送信

特に手間だったのがスキャンしてファイル名を変更する作業でした。従来は請求書を1枚ずつスキャンし、ファイル名を手作業で変更していましたが、非効率でミスも発生しやすい状態でした。

そこで、EXCELに変更前のファイル名と変更後のファイル名を入力し、一括で変更できるようにしました。以下はその大まかな流れです。

  1. PDFを分割できる商用利用可能なフリーソフトpdf_asでスキャンデータを分割
  2. フォルダのアドレス欄に「cmd」と入力し、コマンドプロンプト(黒い画面)を表示
  3. コマンドプロンプトにdir/b |clipと入力しEnter
  4. クリップボード内のファイル名をEXCELに貼り付け(例:セルA1)
  5. 変更後のファイル名をセルA2に入力
  6. セルA3に=ren&" "&A1&" "&A2という数式を作成し変換コマンドを作成
  7. コマンドプロンプトに貼り付けてEnterを押すとファイル名が変更

この方法で、複数のデータでも一括で変更でき、大幅な時間短縮が可能です。ただし、スキャンした請求書の順番と変更するファイル名の順番を合わせる必要があります。また、コマンドプロンプトを使う際にはファイル名には禁則文字がありますので注意してください。

まとめ

EXCELを使った業務効率化は追加費用がかからず、社内で作成・カスタマイズも容易ですのでぜひご活用ください。どうしてもわからない場合や、導入したい場合は弊社のお問合せフォームよりご相談ください。但し有償のコンサルティング契約が必要となります。

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